伸びるネイリスト、伸びないネイリスト
これまで数多くのネイリスト、サロンスタッフ、講師、ブランドと向き合ってきたhbaz 代表・長井竜太さん。300人以上の採用に関わり、現場で人を見続けてきた彼が語るのは、“伸びる人”に共通するリアルな条件だった。
300人以上の採用に関わって見えてきた、成長する人の条件
長く人を見続けていると、技術が伸びる人、指名が増える人、周囲から信頼される人には、いくつか共通点があることに気づきます。
もちろん、ネイルの技術やセンスは大切です。でも、それだけで長く活躍できるわけではありません。
第一印象や接客力、責任感、個性の出し方、変化を続ける姿勢。そして、周囲への感謝。
そうした日々の何げない言動や、人との向き合い方に、その人が伸びるか、伸びないかが表れると思っています。
伸びる人は、最初の一秒に“明るさ”がある
僕が人を見る時、最初に感じるのは、やっぱり明るさなんですよね。
面接だから笑顔でいればいい、という単純な話ではありません。部屋に入ってきた時の空気感や、挨拶の仕方、声の出し方、ハキハキしているかどうか。そういうところを結構見ています。
これまで300人以上の採用に関わってきましたが、面接だけがうまい人もいます。
最初に少し違和感があっても、話しているうちに受け答えが上手で、「意外といいんじゃないか」と思わされてしまう。でも、後から振り返ると、その最初の違和感が当たっていたということも少なくありません。
昔、「部屋に入ってきて一秒で判断しろ」と言われたことがあるんです。
もちろん、本当に一秒だけですべてを決めるわけではないですし、オーラが見えるというような話でもありません。
ただ、その人がまとっている空気や、周囲に与える印象は、最初の一秒にも表れると思うんです。
振り返ってみると、その時に感じたことは、意外と間違っていないんですよね。
伸びない人は、“違和感”が態度に出る
採用してから、「あれ、ちょっと違ったかもしれない」と感じる瞬間もあります。
たとえば、言ったことをやらなかったり、明らかに納得していない顔をしたりする時ですね。
そういう態度って、僕に対してだけではなく、いずれお客さまにも出ると思うんです。
ネイルサロンは、一人のネイリストが一人のお客さまを担当するので、個人で完結している仕事のようにも見えます。でも、実際にはチームで成り立っています。
受付の対応や、スタッフ同士の会話、店内の空気感。そうしたものが全部、サロン全体の印象としてお客さまに伝わります。
だから、技術があるかどうか以前に、空気を壊さないことが大切です。
自分の感情を、そのまま周囲に出さないこと。納得できないことがあったとしても、それを表情や態度でぶつけないこと。
感情を持ってはいけないという話ではありません。
自分の感情が、周囲にどんな影響を与えるかまで考えられるかどうか。そこは、伸びるか伸びないかに、かなり関わっていると思います。
個性は、武器になる。好きなものを出し切れる人は強い
これまで見てきた中に、すごく伸びた子がいます。
第一印象は、髪がピンクで、ピアスもたくさんついていて、かなり個性的な子でした。
僕は個性のある子が好きなので、それをマイナスには感じませんでした。ただ、最初から技術がすごかったわけではありません。
むしろ、最初の頃は怒られてばかりで、「大丈夫かな」と思う時もありました。
でも、1年、2年と見ているうちに、ある時から急にグッと伸びたんです。
その子は、接客が抜群にうまかったんですよね。
さらに、自分の好きなものを、ちゃんと前面に出していました。
GLAYが好きで、ブログにもホットペッパービューティーにも、GLAYが好きだということを書いていたんです。
そうすると、同じようにGLAYが好きなお客さまや、その子の感覚に共感する人が集まってくるんですよね。
最終的には、毎月100万円を超える売上を上げて、指名のお客さまだけで120人くらいいたと思います。
万人に好かれようとすると、どうしても無難になります。
誰にでも合わせられることは悪いことではありません。でも、自分の好きなものや、自分が何者なのかが見えないと、お客さまにとっても選ぶ理由が弱くなってしまいます。
それよりも、自分の世界観にハマってくれる人を大切にしたほうがいいと思うんです。
そのほうが自分も仕事がしやすいし、お客さまとの関係も深くなります。
個性は、ただ目立つためのものではありません。
自分が何を好きで、どんなことを大切にしているのかを、きちんと伝えること。それは、お客さまがそのネイリストを選ぶ理由になると思います。
伸びない人は、できない理由を他人に求める
逆に、伸びない人は、すぐ不貞腐れて、それが顔に出る人ですね。
文句を言う場所を探している人。そして、何かあると他人のせいにする人です。
「言われたからそうしました」
「教わっていないので、できません」
「自分は悪くありません」
そうやって、できなかった理由を誰かのせいにすれば、その場では自分を守れるかもしれません。
でも、それを続けている限り、自分自身の課題には向き合えないので、なかなか伸びないと思います。
僕自身も、若い頃は他責だったと思います。
ただ、サラリーマン時代に支店長という立場を経験して、支店で起きるすべての出来事が自分の責任になる、ということを叩き込まれました。
部下がミスをすれば、上司である自分が謝る。
自分がミスをした時には、自分の上司が頭を下げる。
その姿を見た時に、「この人にこんな思いをさせちゃダメだ」と思えるかどうかは、すごく大きいと思うんです。
そこで、「自分は悪くない」と考えるのか、それとも、自分にできたことはなかったか、自分の行動をどう変えるべきかを考えられるのか。
気づいて、修正できる人は伸びます。
責任を引き受けるというのは、自分を責め続けることではありません。
自分が変えられる部分を見つけて、次の行動に反映することだと思っています。
ネイリストは、究極のコミュニケーション職である
ネイリストって、すごく高度なコミュニケーションの仕事だと思うんです。
施術時間も長いですし、お客さまと対面で向き合います。しかも、手に触れる仕事じゃないですか。
だから、ただ絵が好きとか、アートが好きというだけでは、仕事として続けていくのが難しい部分もあると思います。
もちろん、ネイルが好き、アートが好きという気持ちは、ネイリストを目指す入口としては素晴らしいです。
でも、仕事にするのであれば、お客さまとどう向き合うかが絶対に必要になります。
お客さまが何を求めているのか。
どんなデザインにしたいのか。
会話を楽しみたいのか、静かに過ごしたいのか。
どのくらいの距離感が心地いいのか。
どんな言葉をかけたら安心してもらえるのか。
お客さまは、すべてを言葉にしてくれるわけではありません。
だから、表情や声のトーン、その場の空気から感じ取る必要があります。
そこを感じ取れる人は、やっぱり強いです。
技術が同じくらいであれば、最後に選ばれるのは、「またこの人に会いたい」と思ってもらえる人だと思います。
ネイルをきれいに仕上げることは、もちろん大前提です。
でも、それに加えて、その施術時間自体を心地よくできるかどうか。
そこが、長く支持されるネイリストと、そうでないネイリストを分ける部分だと思います。
人気が続く人は、変わり続けている
いま人気がある人でも、この先ずっと同じように人気が続くかは分かりません。
僕が少し危ないなと思うのは、本人自身が、どこか飽きてしまっている人です。
ネイル自体には飽きていなくても、SNSに飽きているとか、発信することに気持ちが入っていないとか。
そういうことって、見ている人には伝わると思うんですよね。
投稿すること自体が目的になっていたり、同じような写真や言葉を繰り返していたりすると、本人の気持ちが動いていないことが、画面越しにも伝わってしまいます。
僕は、「変わらないですね」と言われることが、最高の褒め言葉だと思っています。
でも、本当に何も変わらなかったら、たぶん衰退していくんです。
周囲から見た時には変わっていないようでも、自分の中ではずっと変化している。
新しいものを取り入れたり、試行錯誤したり、必要のないものを手放したりしながら、少しずつ進化している。
その積み重ねがあるからこそ、周りからは「ずっと変わらないですね」と言ってもらえるんだと思います。
変わらないために、変わり続ける。
僕自身も、そこを目指していきたいと思っています。
伸びるネイリストとは、感謝を循環させられる人
結局、伸びるネイリストって、お客さまがいるから自分の仕事が成り立っている、という感覚を持てる人だと思います。
お客さまが来てくれるから、ご飯を食べることができる。
スタッフがいてくれるから、サロンが回る。
講師や先輩、ブランド、家族など、いろいろな人が支えてくれているから、いまの自分がある。
そのことを理解している人は、自然と目の前の人を大切にします。
技術があることも、センスがあることも、発信力があることも大事です。
でも、それ以前に、人に寄り添えるかどうか。
自分の非を受け止められるかどうか。
自分の好きなものを、ちゃんと出せるかどうか。
そして、変わり続けられるかどうかだと思います。
伸びる人は、自分だけを見ていません。
目の前のお客さまを見て、一緒に働く仲間を見て、自分を支えてくれている人を見ています。
そして、自分一人の力だけで伸びてきたわけではないことを知っています。
感謝がある人は、自然に人を大事にします。
人を大事にする人のところには、また人が集まります。
だから、そういう人は伸び続けるんだと思います。
誰かから受け取ったものを、また次の誰かに返していく。
そうやって感謝を循環させられる人が、技術や流行を超えて、長く愛されるネイリストになっていくのではないでしょうか。

PROFILE
長井竜太
株式会社hbaz代表取締役
1975年、東京都生まれ。2005年よりネイルサロンの経営をスタートし、2013年に株式会社hbazを設立。現在は「INITY」をはじめ、「TOY’s × INITY」「lem.」など、複数の人気ネイルブランドを手がける。サロン経営やブランド運営、人材育成など、幅広い分野でネイル業界の発展に携わっている。
Instagram:@ryuta_nagai

