経営とは、特別な決断よりも、日々の“整え”の積み重ねかもしれない。毎朝の小さな習慣が感情を整え、視界を澄ませ、今日の意思決定を支えている。ブランドを率いる経営者が語るルーティンには、未来へ進み続けるための静かな覚悟がにじんでいる。
ルーティンは、経営を整えるための“仕組み”
朝はだいたい7時前後に起きます。起きて5分以内に、ベランダでSNS投稿用の「グッドモーニング」動画を撮るのが私の習慣です。もう5年ほど続いています。特別な意味を持たせているわけではありませんが、「今日も動く」「今日も前に出る」と自分に言い聞かせる時間になっています。続けているという事実そのものが、自分の軸をつくっているのだと思います。
“祈る時間”が、自分を俯瞰させる
その後は、自宅の神棚に向かいます。家族、会社、ブランド、スタッフとその家族、そして私に関わるすべての方々が前を向けるよう祈ります。最近では、サロンさまの商売繁盛と発展も欠かしません。ブランドの未来は、日々現場で向き合ってくださるサロンさまの元気に支えられていると実感しているからです。
出張先でも、近くに神社があれば必ず参拝します。お願いする内容はほとんど変わりませんが、繰り返すことで、自分の反省点や向き合うべき課題が整理されていきます。
運気が上がっていると言われることもありますが、実際には越えるべき壁の難易度も上がっています。だからこそ、課題を乗り越えるために“心を整える時間”が必要だと感じています。
時間は、“空く”ものではなく“設計する”もの
朝はiPhoneのカレンダーを確認し、その日の予定を把握します。空き時間があれば、すぐにTo Doを書き込みます。何も予定がない日こそ、後回しにしていた長期課題を拾うようにしています。
時間は自然に生まれるものではなく、意図的に設計するもの。経営者にとって、“空白”をどう使うかはとても重要だと思っています。
情熱が揃った時だけ、GOを出す
意思決定で最も大切にしているのは、「情熱」です。
工場、開発、デザイナー。それぞれが本気で「これは出したい」と思っているかどうか。その熱量が揃っていれば、私も全力で押します。どれだけ数字が魅力的でも、温度が低ければ進めません。
以前は量を重視していた時期もありました。会社が伸びているうちに、商品を出し続けることが重要だと考えていたからです。
しかし現在は方針を切り替えました。人々の記憶に残る商品を、ひとつずつ丁寧に届ける。サロンさまが腰を据えて使い続けられるものを中心に開発しています。
数字の“裏側”を読む
売上は週ごとに確認し、前年対比やディーラーごとの動きをチェックします。委託と買取では数字の見え方も異なります。納品時点で計上される場合もあれば、売れた瞬間に反映される場合もある。
それぞれにプレッシャーはありますが、私は数字そのものより、“数字の裏側で何が起きているか”を読むことを大切にしています。
信頼は、“任せること”で生まれる
スタッフとの関係では、私は常に社内にいるタイプではありません。ただ、会社へ行く際は必ず一言LINEを入れます。それだけで自然とコミュニケーションが生まれます。
役職名も、あえて分かりやすくしています。係長、課長、部長。役職は責任を明確にし、成長のきっかけにもなるからです。
決裁権を渡すことは、信頼を渡すことでもあると思っています。
現場感覚を失わないために
常にネイリスト目線を忘れないために、SNS上でのやり取りやイベント会場での対話も大切にしています。DMも、できる限り丁寧に返します。
現場の空気を直接感じ続けることが、ブランドの方向性を誤らないために欠かせないと感じています。
長く走るために、身体を整える
体調管理も仕事の一部です。ランニングができない日でも、できるだけ歩く。糖質を控える。深酒をしない。会食を減らし、なるべく終電で帰るようにしています。
長く走り続けるためには、身体のメンテナンスが欠かせません。
ストレスを感じた時は、地元の仲間と他愛のないやり取りをします。経営とは異なる世界の価値観に触れることで、視野がリセットされるんです。
孤独を強く感じることは多くありませんが、組織が大きくなるほど責任は重くなります。そんな時は、同じ立場の経営者に相談します。
“第二の柱”を育てるという未来
今後の課題は、“第二の柱”を見つけることです。
現在はメーカー事業一本で取り組んでいますが、柱は複数あった方が強い。ただし分散しすぎず、一本一本を太くすることが重要です。
最終的な目標は、ジェルネイルメーカーとしてNo.1になること。そのために必要なのは「教育」だと考えています。
教育制度を磨き、ブランドと結びつける。流行を追うだけではなく、サロンさまが継続して使える商品を届ける。そして会社が大きくなっても、現場でネイリスト一人ひとりと向き合う自分であり続けたいと思っています。
“整える”ことが、未来の強さになる
私にとってルーティンとは、自分を縛るものではありません。
経営者として感情に振り回されず、前へ進み続けるための“整える仕組み”です。
日々の積み重ねが、未来の強さをつくる。私はそう信じています。

指先にも、“長井節”が宿る
この日の長井さんのネイルは、新商品として検証中の未発表「極みツヤパウダー」を使用した、ギラギラ感全開のデザイン。
「すべてのメンズに捧げます! 飲み屋でモテたいなら、こんなネイルだ(笑)」
そんな一言にも、“ネイルをもっと自由に楽しんでほしい”という長井さんらしい遊び心がにじんでいた。

PROFILE
長井竜太
1975年、東京都生まれ。2005年よりネイルサロン経営をスタートし、2013年に株式会社hbazを設立。現在は「INITY」をはじめ、「TOY’s × INITY」「lem.」など複数の人気ネイルブランドを手がけ、ネイル業界の第一線で活躍している。
Instagram:@ryuta_nagai

