鑑賞するためのネイルアート「乾漆ネイル」を追求する
奥畑実奈展 凛美 -輪廻転生- 2023.11.15-20 @横浜高島屋7階美術画廊
「いわゆる一般的なネイルって消費されるもの。そんな儚さもネイルの魅力なのですが、何千年も前からあったといわれる漆素材を使って『命の再生をネイルで』という想いから、作品作りに入りました。着けるものというより飾るもの。時代を越えて残っていくもの、それを乾漆の技術を用いてネイルアートで表現しました」
東京藝術大学大学院(美術研究科彫刻専攻)時代に、ネイルの魅力を知り、大学院と並行して黒崎えり子ネイルビューティカレッジへも通った。大学院とネイルスクール卒業後は、ネイリストとなった奥畑実奈さん。現在は、独立しフリーランスのネイリストに、そして日本古来の伝統工芸である乾漆(かんしつ)の技術を継承したアーティストとしても活動をしている。


「彫刻を専攻していた大学院時代、ネイルアートに興味を持ち、好きが高じてネイルスクールで学ぶうちに『もっとネイルが上手くなりたい』という衝動にかられました。さらに、もっとネイルの技術を向上したい一心で『エリコネイル』で働き、コンテストへも出て技術を磨きました。その頃にもう一度大学院へ通い、工芸科の漆芸研究室に入学し、小椋範彦先生(紫綬褒章受賞)に師事し、乾漆の技術を学びました」
2020年、世界はコロナ禍に見舞われ、サロンワークもままならない状況となる。これを機会に奥畑さんは、漆とネイルを融合させた作品作りに一層精を出した。毎回の個展に展示される作品のほとんどが、ネイルチップ自体が漆でできているという。漆を何度も何度も塗り重ねて、土台となるネイルチップを作っているというから驚きだ。


ネイルアートを「美術品」として
「なんともいえない上品さが漆にはあります。ジェルネイルのように、塗って固めて完成ではなくて、とても手が込んでいるからこそ生まれる特別なツヤ感があります。漆塗りの最終工程では、粉と油を付けて、ピカピカになるまで手で磨くんです。ずっと磨いていると、漆の表情が変わる瞬間があります。パッと明るくなるような、そんな瞬間が喜びです」
「座らずに飾る椅子や、履かずに眺めていたい靴があるように」奥畑さんはこう続けた。「着けずに鑑賞するネイル、コレクションするネイル。ネイルにおける概念をひとつずつ崩していき、ネイルの可能性をもっと広げていきたいです。そんなチャレンジをこれからも続けていきたいと思っています」



奥畑実奈さん
◾️Profile
奈良県出身。2000年、東京藝術大学美術学部彫刻科卒業、2002年、東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了。2003年、黒崎えり子ネイルビューティカレッジ卒業。その後、「エリコネイル」に勤め、国内外のコンテストで多くの優勝経験を持つ。2023 年独立しフリーランスのネイリストとなる。@mina_okuhata
こちらの記事は現在発売中の『NAIL VENUS』2024_Springに掲載されています。
Text_Daisuke Udagawa(M-3)