時折ジョークを交えながらもしっかりと芯の通った言葉で考えを述べ、真面目トークが続いたらまたジョークをはさむ。建築業を経て、ネイルの世界へ。そんな彼の正体は、コミュニケーションと美フォルムにこだわる。バランス感覚に優れたネイリスト、竜二さん。
相手を知り、心を大事にする
「幼少の頃は、コミュニケーションが苦手な子供でした。特に大人の男性恐怖症で、いつも母親の足元に隠れていたような子だったそうです。しかも極度の偏食で、白米、豆腐、いくら以外は食べられない状態だったという。小学校の高学年まで栄養失調体質でした」
といった意外なエピソードから始まったインタビュー。今となっては、コミュニケーションのスペシャリストのような竜二さん。意外なエピソードはそれだけではなかった。
「食事に関していうと、ある時突然色々食べられるようになりました。それは『食べれた方がカッコいい』と思ったから。いざ食べたら『普通に美味しいじゃん! 』ってなりました。『食べられない』というのはすべて思い込みからきていて、先入観や偏見、警戒心が人よりも強かったみたいです」
中学、高校時代はバスケットボールに打ち込み、卒業後は親のススメで一旦競艇選手を目指したという竜二さん。けれども挫折が訪れる。
「競艇選手になるための試験の最終選考で落ちてしまって。それですっかり自信を喪失しました。その後は、知り合いのツテで建築業に入り、主に重機を担当。パワーショベル、ダンプカーなどハードワークをこなす日々がはじまりました」
衝動的な転職
建築業に勤め、6年ほど経ったある日の昼休みに突然「ネイリストになろう」と決め、ネイルスクールへ資料請求し、その翌週にはすでに入校していたという。
「転職を考え始めたときに、衝動的にネイリストの道を選びました。一見、真逆みたいな職種でも、共通している部分が実はある。例えば、剥がれないネイルの作り方って、建築でいうと壁紙を貼るとかペンキを塗るという工程に通じるものがあります。要は根拠が同じという。今、うちのサロンでは『ネイルの持ちがいい』と多くのお客さまから好評をいただいていますが、これは、建築業から養った知識と技術をネイルに導入しているからともいえます」
2つのサロン勤務を経験し独立。現在は自身のサロン「NAIL&SPA P-BOX」をオープンして5年目を迎えた。コミュニケーションを大事にし、特にお客さんへの丁寧なカウンセリングに関しては余念がない。
自分が嬉しいことは、相手も嬉しい
「常にお客さまの立場になって物事を考える。スタッフ同士のコミュニケーションなら、相手になりきって物事を言う。それをモットーにしています。思い込みや先入観、そして警戒心を取っ払って、自分たちのイメージを最大限に広げることを大切にしています。『自分がされて嬉しいことは、相手も嬉しいもの』そんなことをスタッフにいつも伝えています」
過去の経験を大事に扱い、それをとことん磨いたら、研ぎ澄まされたパフォーマンスへと生まれ変わった。竜二さんのこだわりである快適なサービス作りは「心を掴むこと」から始まる。竜二さんのコミュニケーションの流儀は、常に「相手ファースト」だった。


※竜二さんの「3種の神器」「名作コレクション」の詳細は、現在発売中の『NAIL VENUS』(2024_Spring)でご覧になれます。ご購入はこちらから → Fujisan

竜二(りゅうじ)
◾️Profile
元建築業という異例の経歴を活かし、サロン内の動線を考えたサロン作りを実現。丁寧なカウンセリング力と、圧倒的な美フォルム作りに定評がある。
◾️Salon Data
NAIL&SPA P-BOX
埼玉県戸田市新曹1995-7 芦原ハイツ
048-278-2737 @ryuji_nail_collection
Photo&Text_Daisuke Udagawa(M-3)