アート、ファッション、カルチャー、グルメに代表される街、フランスはパリで活躍するネイリストがいる。その名も「ERI NARITA」。ニューヨークで活動をした後、パリへ移住。「ファッションの中心地で実力を試したい」。ここではそんなERIさんに、その行動力と原動力について話を伺った。
Profile
ERI NARITA/1986年生まれ、神奈川県出身。大学卒業後、銀行へ就職。その後、ネイリストへ転身。2012年ニューヨークへ渡り、サロンワークと併行してファッション業界でのネイルの仕事を経験。その後、一時帰国を経て2015 年に渡仏。現在、パリコレをはじめとするファッションショーや雑誌、広告のネイルアーティストとして活躍中。@erinaritanail
ニューヨークからパリへ。ネイルで勝負する
アートやファッションに造詣が深い多くのパリジェンヌ達が、彼女のネイルを求めてやってくる。ERI NARITAさんは、現在パリを拠点としパリコレやファッション誌、広告の現場で活躍するネイリストだ。
そんなERI さんの経歴を聞くと、もともとは銀行員だったというから驚く。
「大学在学中の時に就職活動に疲れてしまって、トントン拍子で採用が決まったのが、たまたま銀行だったという理由で就職しました。外国為替の部署に配属され、幼少期から英語を熱心に勉強していたため『英語に携われるならいいか』とも思っていました」
ところが2年ほど経つと、ある日自分が病いに侵されていることを知る。入院と治療を経て、一時は生死を彷徨うほどの重病だったという。「これからは好きなことをして生きていこう」と考え銀行を退職した。
その後、幼少期から英語を勉強していたこともあって、次第に海外生活を視野に入れるようになったという。
「海外で、生きていくには『手に職』を付けてフリーランスで働く方が、自分には向いていると考えるように。そして、学生時代から好きで通っていたネイルサロンのことを思い出し、ネイリストへの道を目指すようになりました」
ネイルスクール卒業後、都内のサロンに勤務。充実した日々ではあったが、毎日のサロンワークをこなしているうちに、海外進出への意欲は一層高まっていった。そして、当時から大ファンだった「レディ・ガガのネイルを担当したい」という一心から、渡米を決意した。
2012年、日本人のオーナーがいるネイルサロンへアクセスし、ニューヨークでの生活がスタート。そんなオーナーの伝手で知り合ったヘアメイクアーティストをきっかけに、ファッションの現場に呼ばれるようになった。
「現場へ行って突然、ポリッシュで作るフレンチをオーダーされました。その場で急遽作る。『この雰囲気、すごくいいな!! 』って思いました。それまでは、ネイルは孤独な仕事だと思っていましたが、ファッションの現場へ行くと、スタイリスト、ヘアメイク、フォトグラファーのみんなが意見を出し合って、共同作業で作品を作り上げていくことが多い。普段のサロンワークではあり得ないアイディアが次から次へと出てくる、そんな場所が自分にはとても合っていました」
Works

パリでは『VOGUE』をはじめとしたファッション誌や広告のネイルを担当。モードなエッセンスが効いた刺激的なビジュアルが際立つ。ERINARITAさんのインスタグラムより。@erinaritanail
ニューヨークではショーや雑誌撮影をこなし、人気アーティストをはじめとするセレブのネイルを手がけるほどになった。そんな経験を経た後、一時帰国。
帰国後は「もう一度ニューヨークへ」という気持ちもあったが、ワーキングホリデーを使って2015年に渡仏をし、現地のエージェント(事務所)に所属。その後結婚を経て配偶者ビザも取得。現在はパリコレや雑誌、広告などで活躍するネイリストとなった。
「渡仏を決めた当時、Facebookでパリへ行くことを伝えると、ニューヨークの知人がパリでのコネクションを作ってくれました。常に作品(ネイルチップ)を持ち歩き、色々な人に見てもらって、エージェントに所属することができました。まずは、パリの有名ネイルアーティストのアシスタントからスタートし、毎日コツコツと活動をしていくうちに、次第に大きな仕事を任せてもらえるようになりました」
ネイリストとして、パリでの生活も今年で10年目を迎えた。海外で働く、そして生活をするために必要なことをERIさんに尋ねると。
「海外では、まず『YES or NO』をはっきり言うこと、自分の意思をしっかり持って、それを伝えることも大事です。そして提案力も。言われたことに従うのも大事ですが、それはアシスタントでもできること。もっと高みを目指すなら、言われた
ことに対しても必ずプラスアルファの提案をする。相手に寄り添いながらも、もっと良くなるように意見交換をする。そうすると自然と信頼関係が築けるようになると思います」
「今後はビッグメゾンブランドで、ネイルが主となるファッションショーを実現することが目標」とも語るERIさん。そして最後に、「海外では常に明るく、ポジティブな気持ちが一番大事です」と締めくくってくれた。
My Nail

ERIさんは普段から自身にインパクトのあるネイルアートを施している。「これが、いわゆる私の名刺代わりになっています。正直生活はしづらいのですが(笑)」
Photo&Interview_Daisuke Udagawa(M-3)